ランカ にほんにやってきたおんなのこ
偕成社は、子どもたちの教育現場を知る日本語教師が外国につながりを持つ子どもたちについて「言葉の習得より大切なこと」をテーマに描いた絵本「ランカ にほんにやってきたおんなのこ」を2020年3月中旬に発売する。
「ランカ にほんにやってきたおんなのこ」は、日本語教師・野呂きくえ氏初の作品で、日本語を学ぶ子どもたちとの関わりから生まれた絵本となる。「ランカ にほんにやってきたおんなのこ」の作者である野呂きくえ氏は、25年以上の経験をもつ日本語教師。
偕成社の編集者との出会いは、まったく別の作品を投稿したことがきっかけだったが、よく知る「日本語を学ぶ子どもたち」のことを書いたらいいのでは、との提案を受けて、このテーマで、初めての絵本を手がけることになった。
それから10年以上、さまざまな活動をしながら、日本で日本語を学ぶ人や子どもが直面する問題を見ていくなかで、至った結論は、「言葉の習得は本当に力になる。けれど、言葉以前のだれかとのつながりは、もっと力になる」ということ。それを伝えるためにできたのが、『ランカ』のストーリー。
心細いランカの気持ちを表現しながらも、やさしくあたたかみのある絵は、松成真理子氏が手がけている。
作:野呂 きくえProfile●1960年横浜生まれ。東海大学文学部北欧文学科フィンランド語専攻卒業。フリーでフィンランド観光局にて観光案内やサンタクロースの通訳をする。その後日本語教師として、日本学術振興会研究員に日本語を教え、現在は小学校や中学校で、外国につながりのある子どもたちに個別で日本語を教えている。
絵:松成真理子Profile●1959年大分生まれ。絵本に『まいごのどんぐり』(児童文芸新人賞受賞)『くまとクマ』『にちようびのばら』『じいじのさくら山』『ふでばこのなかのキルル』『たなばたまつり』『いまなんじ?』『ころんちゃん』『せいちゃん』などがある。
絵本『ランカ にほんにやってきたおんなのこ』のストーリー
ランカは、外国からやってきて日本の小学校に入ることになった、10歳の女の子。これまで通っていた学校とはちがう毎日に、一生懸命ついていこうとするが、まわりの子の言葉も、文字もわからず、孤独な気持ちを抱える。ある日、ふるさとを思い出して木登りをしていると、クラスメイトの男の子に足をつかまれたランカ。「なんでひっぱるの」と胸がいっぱいになり、泣き出してしまう。すると、足をつかんだ男の子も、泣き出してしまった。実は男の子はランカに、「木に登ったらあぶないよ」と教えようとしていたのだった。ちがう文化で、言葉がわからないのは、クラスメイトの子たちも同じだったわけだ。
日本の学校に通う、外国につながりのある子どもは、4万人以上。
文部科学省の調査によると、日本の公立学校に通う、日本語の教育が必要な生徒は、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及ひ゛特別支援学校を合わせると、4万3千人以上いる。
▼平成28年度調査より
日本国籍をもち、日本語教育が必要な生徒の数も、増加傾向にある。
「ランカ」は、世界中の学校にいる
主人公ランカのふるさとがどこの国かは、本の中に明示されていない。今、日本のあちこちの学校に通う外国の子もランカであり、また、日本の子が外国の学校に通うことになったら、自分がランカの立場になることもある。
異なる文化をもつ国で、聞こえてくる言葉や目に入る文字が読めないと、どんな不安な気持ちになるだろう……。そんな想像力が芽生える一冊。日本語を学び始めた子にも読めるよう、文章はすべてひらがなで構成されている。
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