がろあむし
偕成社は、2017年発売の絵本「つちはんみょう」で小学館児童出版文化賞を受賞した舘野鴻氏による、受賞後初の作品で、取材に10年かけた緻密な絵で描く渾身の絵本「がろあむし」を2020年9月中旬に発売した。
「がろあむし」は、著者自らが約10年をかけて取材・調査を行い、虫が生きる地下の暗黒世界を、人間の社会と対比させながら、緻密で迫力ある絵で描き上げた。
▼「がろあむし」紹介動画(約1分)
徹底した取材を元に描かれる緻密な生物画が高く評価されている、舘野鴻氏の最新作「がろあむし」
舘野鴻氏は、埋葬虫とも呼ばれるシデムシの一生を描いた「しでむし」で絵本デビュー。あまり広く知られていないものの、神秘に満ちユニークな生き方をする虫にスポットを当て、その虫の生息地の取材や調査、虫の観察を自ら行って絵本にするという、徹底した姿勢で絵本を制作している。
2017年には、1ミリにも満たない大きさで生まれ、色々な虫にとりつきながらわずか4日の命を繋いでいく虫を描いた「つちはんみょう」で、小学館児童出版文化賞を受賞。
小さな虫の世界が画面いっぱいに大きく描かれ、その迫力には思わず子どもも大人も目を見張る。
約10年をかけて取材・観察したガロアムシの一生、人間の町の変化を描き出す「がろあむし」
今回の新作絵本「がろあむし」では、約10年に及ぶ取材を実施。
舘野鴻氏が住む神奈川県内の、相模川の左岸の崖の下を取材地とし、その環境なども調べながらガロアムシを観察してきた。
人知れず、崖の下の暗黒世界に生まれたがろあむしの赤ちゃん。獲物を探して進み続け、周囲の小さな虫たちを食べながら大きくなっていくが、自分が食べられてしまうという危険も常に隣り合わせの状況である。成虫になっても、足を食いちぎられたり、えさにありつけなかったり、とやがてオスとメスが出会い、卵を産み、新たな命を紡いで、がろあむしは死んでゆく。
ガロアムシの寿命は、およそ5~8年と考えられているそう。1匹のガロアムシが生まれて死んでいくまでの間に、地上の人間の暮らしは大きく変化していく。
この絵本で舘野鴻氏が描いたのは架空の町だが、はじめに広がっていた畑や森が、おわりの場面では切り開かれて、大きく姿を変えている様は、日本各地のさまざまな土地を思わせる。
このように今回、舘野鴻氏は、虫の一生とともに、人間の町の変化までも描き出し、「私たちの暮らしの延長上に暗黒の生物世界がある」ということを伝えている。
地下世界に広がる宇宙と、そこに生きる小さな虫の大きな一生。そして、おなじ地平で変わりゆく人間たちの社会を濃密に描き出した怪作となる。
舘野鴻Profile●1968年、神奈川県横浜市に生まれる。札幌学院大学中退。幼少時より熊田千佳慕氏に師事。1986年北海道へ渡り、昆虫を中心に生物の観察を続けるが、大学在学中に演劇、舞踏、音楽と出会い舞台に上がる。その後、舞台美術等の仕事をしながら音楽活動と昆虫採集を続ける。1996年神奈川県秦野に居を移してからは、生物調査の傍ら本格的に生物画の仕事を始め、図鑑や児童書の生物画、解剖図プレートなどを手がける。絵本に『しでむし』『ぎふちょう』、『こまゆばち』(澤口たまみ・文)『なつのはやしのいいにおい』、生物画の仕事に『ニューワイド学研の図鑑生き物のくらし』『ジュニア学研の図鑑魚』、『世界の美しき鳥の羽根鳥たちが成し遂げてきた進化が見える』などがある。
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