挫折を経て、猫は丸くなった。: 書き出し小説名作集
[オススメ度]
★★★☆☆
416作品の書き出し小説を集めた作品集の第2弾である「挫折を経て、猫は丸くなった。: 書き出し小説名作集」が「アメトーーク」の「読書芸人」の回で光浦靖子がこの作品集を紹介しており、タイトルに惹かれて読んでみた。
書き出し小説とはオリジナルの書き出しだけで成立させる小説スタイル。本のタイトルになっている「挫折を経て、猫は丸くなった。」も書き出し小説の一つであり、この書き出しだけで、猫に何が起きたのだろうかといった妄想が広がっていく。
金持ちに飼われて何不自由なく育った故、高慢を絵にかいたような猫がある日突然、飼い主に捨てられてしまい、野良暮らしが始まり、ある雪の日、寒さで丸くなる。丸くなっている猫とは、意外にしょんぼりしている姿なのかもしれないなんて連想まで起きてしまった。
アメトーークで光浦靖子が紹介していた書き出し小説が下の作品。
オセロ部の誇りにかけて、不良から部屋の角だけは死守した。
これは「挫折を経て、猫は丸くなった。」の書き出し小説と同じ、もんぜんという方の作品だった。
1つ1つの作品が短いので一気読みすると1時間かからなかったが、何気なくその日の気分で本を開いたりして、開いたページの作品だけ読み、書き出しから広がる世界観を夢想するなどが本来の楽しみ方だろう。
日本人は短歌や俳句、はたまたTwitterの日本での浸透力を踏まえてみても短文形式の文体が好きな傾向にあるのが分かる。そういった観点からも書き出し小説は日本人に相性が良い形態なので短歌や俳句のように1つ1つの作品を味わって余韻を楽しめるので何度でも読める。
作品をピックアップし、その作品の解説や書き出し小説の常連達による書き出し座談会も収録されている。
「書き出し小説」を作ってみた。
チャンネルを付けると北の国からであった。
吾輩は下戸である。お酒は飲めない。
路地の多い郊外で過ごしてきました。
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一瞬で読める、自由で楽しい416の物語。書かれているのは冒頭だけ。続きは読み手のイマジネーション次第。選りすぐりの新しい文学、ここに集う!(「BOOK」データベースより)
天久聖一
1968年香川県生まれ。1989年漫画家としてデビュー。以来、主にマンガ以外の分野で活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)
書き出し小説第1弾「書き出し小説」
書き出し小説とは、たった数行、冒頭だけの物語の第一弾。この新しい文学スタイルに挑戦した精鋭たちの作品から、鬼才・天久聖一氏が選 び抜いた「書き出し小説」の数々。
▼書き出し小説
・モンスターペアレントは森の人気者だ。
・「ねんど」だ! 高校以来だから十年ぶりか。ものすごくいい女になってる。
ああ、本名が思い出せない。
・メールではじまった恋は最高裁で幕をとじた。
・その日、少女はエイプリルフールの日だと知らずに告白した。その日、少年は エイプリルフールの日だと思って承諾した。その日、二人の物語は動き出した。
・恩田さんは身体を前のめりにして「そのバーは照明が薄暗いのかい?」と聞い てきた。三十五にして初デート。応援してあげたい。
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書き出し小説とは、オリジナルの書き出しだけで成立した文学史上最も短く、また新しい文学スタイルである。読むのは一瞬。しかしその余韻は長く、深い。貴方のイマジネーションを容赦なく刺激する、書き出しの世界。(「BOOK」データベースより)